あの後姉と私はかなり久しぶりに手を繋いで帰った。
なんだか恥ずかしくて、とてもくすぐったかった。
たまにはいいものだと二人でくすくすと笑う。
「そういえば、お姉ちゃん家ではあまり笑わないね」
「あんな鬱陶しいのがいるのに笑ってられないわよ。それに・・・」
「それに?」
「私が笑顔を見せるのはあなただけだもの」
「な、何言ってるの」
姉はにやりと笑う。
なんだかさっきから照れてばかりだ。
「嬉しい?」
「・・・・・うん」
「あら、正直ね」
繋いでいる手をぎゅっと握る。
すると姉もそれに答えてくれた。
家に帰ると待ってましたといわんばかりに家族全員でお出迎えをしてくれた。
そんな小学生じゃないんだからと呆れかえってしまう。
「心配したんだぞ!!」
「お姉ちゃんを、でしょ?」
「!」
だって大半は本当の事だ。
私はさっさと兄達をすり抜けていく。
「でも本当の事でしょ」
「なっ!そ、そんなことはない」
そんな兄達を見て私は悪戯心が芽生えた。
第一私が辛い思いをしてきたのはこの人たちのせいでもある。
本当は照れくさいから後でこっそり言うつもりだったけど、こっちの方が面白い。
一泡吹かせてあげましょう。
「お姉ちゃん」
にっこりと笑顔で姉のほうへ振り向く。
姉はきょとんとした顔でこっちを見ていた。
「今日、一緒に寝てもいい?」
そうわざと大きな声で言う。
兄達によーく聞こえるように。
すると兄達は面白いくらい目を見開いて、大きく口を開けていた。
さすが私の姉だ、一発で私の意図を読み取ったのだろう。
口の端が上がる。
「ええ、もちろん喜んで。私も言おうと思っていたから」
『なっ!!?江利ちゃん!?』
「わーい!やったね〜」
「ふふ、楽しみね」
「ず、ずるいぞだけ」
「そうだそうだ!」
兄達はぎゃいぎゃいとうるさく騒ぐ。
私は兄貴達の方に向かってベーっと舌を出し、姉の腕に自分の腕を絡ませた。
「だってお姉ちゃんは私のこと大好きだもんね?」
「そうよ、のこと大好きよ」
「なに!?江利ちゃん俺達はどうなんだい?」
「俺達も江利ちゃんのこと大好きだぞ!!」
姉はそんな兄達をかまうことなく無視をする。
私はにやりと笑って追い討ちをかけてやった。
「別に好きじゃないって。あ、それよりお姉ちゃんお風呂も一緒にはいろ?」
『お風呂!!!?』
これでもかっていうくらい驚いた顔をして大声で叫ぶ。
この人たち本当に呆れるくらい姉限定のシスコンだなと思った。
「あら、いいわね。そうだわの背中洗ってあげる」
「ほんと?じゃあ私もお姉ちゃんの背中あらう」
『駄目だぞ!!おまえだけーー!!』
私と姉はそんな兄達を尻目にしてその場を立ち去った。
なんだかとてもすっきりとした気持ちだった。
これで今までの事は帳消しにしてあげよう。
でも、お姉ちゃんは渡さないけどね。
まだうるさく騒いでいる兄達に母の雷が落ちる事は言うまでもなかった。
